国家論 第1章第1節 国家と土地
第1章第1節 国家と土地の権利関係に関する話。
Chapter 1, Section 1: The story of the relationship between the nation and land rights.
現在日本では、土地の権利は私人による土地に対する完全な所有権が外国籍の人も含めて、大深度地下の利用は除いて、かなり強く認められているようです。その結果、様々な弊害が発生しているように思われます。
現在、東京などの大都市圏では、実際にその家に住んで暮らそうと考えている人は、最早(もはや)、購入できないぐらい不動産価格が高騰しています。実際にタワーマンションなどを購入している人は本人が住むためではなく、投機目的で購入する人が増えているようです。
また、日本人が買い負けしていて、主に中国人の富裕層のような外国籍の人が購入しているようです。この傾向が続くと生活者としての日本人が東京などで住宅を購入し、生活できなくなります。これは国家としては良くない状況だと思われます。
もっとも、投機というのはババ抜きであり、普通の人が到底購入できないほど値段が上がってしまったら、それは間違いなくバブルであって、2023年に入って中央銀行の金利上昇が続いているため、この方面ではそろそろバブルがはじけるかも知れません。
毎年、春先になると採算が取れなくなって放置されている杉や桧(ひのき)の人工林から花粉が拡散し、花粉症が社会問題になっています。これも原因は人工林が個人の所有地になっていて、地主が責任を取らなければならない仕組みになっているため、遅々として、花粉症対策のための伐採等が進まないことが原因です。
戦争中、潜在自然植生だったドングリなどを実らせる照葉樹林の原始林を燃料にするため禿(は)げ山になるまで伐採し、戦後、治水対策などのために植林する際、商品木材の杉や桧(ひのき)を植えましたけれども、外国から安い木材が輸入されて、日本の林業の採算性が悪化したため放置されるようなってしまったのでした。
鹿(しか)などの野生動物が人里に降りてくるのも、針葉樹の杉や桧(ひのき)の荒れた人工林は餌となる木の実が少ないからで、照葉樹林の森に復元すれば、野生動物も人里に降りてこなくなるかも知れません。
生活保護受給者に認定されるためには自宅があると駄目で、自宅がある人は自宅を売却しなければならないという現行の生活保護制度も問題だと思われます。この考え方だと、生活保護から脱却した際、生活保護受給前より貧困化が進んでいて、次に窮乏したら、前より貧困から抜け出すことが困難になってしまいます。
生活保護制度の条件を緩和して、自宅がある人は自宅に住むことを前提に収入が回復するまで、生活費を生活保護受給で補うようにした方がよいと思われます。
住宅ローンが銀行の大きな収入の柱になっていることは否定しませんが、返済まで35年かかる借金は長すぎると思われます。核家族が正しいとされるのも、日本文化になじまないのではないでしょうか。
コンクリートではなく自然石を土台に、大黒柱のある江戸時代から続く伝統工法で建てられた日本家屋は、優に200年ぐらいは住むことができます。プレハブ工法の大手住宅メーカーではこうした建物は建てられないのです。本当に新築しようと思ったら、宮大工に頼まなければなりません。それで空き家になっていた江戸時代の庄屋(しょうや)さんの家屋などが地方から都市部に移築され、古民家として人気を博しています。
親が賃貸マンションから所帯を持ち、値上がりを見越して35年ローンでマンション(本当はアパート、つまり集合住宅)を購入し、何年か保持して、もくろみ通り値上がったところで、マンションを売却して、増えたお金を頭金にして改めて住宅ローンを一戸建ての方に組み直し、4人家族程度が快適に住むことができる一戸建ての家を買って、双六(すごろく)で言うところの上りになるというのが昭和の不動産購入パターンでした。
しかし、住宅ローンを払い終わる前に子供は成人して、親の家から出て行きます。核家族を推奨するような風潮があると、子供達(たち)は親と同じように住宅ローンで自分たちの生活圏内で家を買ってしまいます。
両親が亡くなったら、両親が住んでいた空き家が親の生活圏内に残されてしまいます。子供にとっては利用できない家であり、解体するにも100万単位の費用が掛かり、建物が建っていれば、人が住むための家だからという理由で固定資産税が6分の1に軽減され、更地にしてしまうと利用価値があると言う理由で固定資産税の軽減措置が無くなります。これらの理由で、2023年現在の日本には約900万軒の空き家があるそうです。
これでは喜ぶのは銀行ばかりです。一族に縁のある場所で、何世代もが一緒に暮らせる構造の伝統的な工法で建てられた大きな家で仲良く暮らした方が幸せになれるのではないでしょうか。つまり、不動産としての資産を何代にも渡って蓄積していくことが大切なのではないかと思われます。
リモートワークが可能ならば、日本中どこに住んでも仕事はできるはずですから。また、このように親子で一緒に生活すれば、子育てもワンオペ育児にはなりにくいし、公共の介護サービスを併用しつつ、親の介護と看取(みと)りもやりやすいと思われます。
日本国では、歴史的に広大な領域を所有する大地主が比較的少ない歴史が連綿として続いていたそうです。朝廷は正田(しょうでん)を良民(りょうみん)に割り当て、代わりに租庸調という税金を取得していました。律令(りつりょう)制下では、その任務を国守と言う役人が都から派遣されて、戸籍を管理して行っていました。
やがて、貴族の力が衰えて武士の時代になると源頼朝が鎌倉に幕府を開いて、朝廷から土地を管理する権限を取り上げてしまいました。鎌倉幕府は御家人の領地に対する所有権を認め、代わりに幕府の命令に従う関係を構築しました。「御恩と奉公」という概念による西洋の歴史的概念で言うところの中世ヨーロッパの封建制に似た社会制度が確立しました。
紆余曲折(うよきょくせつ)はありましたが、以後、室町幕府、江戸幕府と数百年に渡ってこの制度が続き、明治政府が西洋の法体系(イギリスの海洋法とドイツの大陸法の折衷的な法体系)を導入するまで続きました。詳細は参考文献に詳しく解説されています。
参考文献
参考文献に記述されているように班田収授の法は割と合理的なので、班田収授の法を2023年の現代日本に復活させても良いかも知れません。
2023年現在、日本の人口は減少しているのだから、日本国籍を持ち、文化的、政治信条的に日本人と自覚している人全てに、無償で生活を維持するには必要十分な土地を支給し、支給された人が亡くなったら支給した土地を回収するような制度があっても良いのではないかと思われます。現代版班田収授の法。
2023年現在、国政では無く地方自治体が、大都市圏から過疎化が進んでいる地方に移住してくれた人、家族に対して、家や田畑を無料に近い低価格で提供する各種優遇策が過疎化対策の政策として行われていますが、それを日本国全体に広げて実施するイメージです。
オーストラリアの土地は原則として「イギリス国王」に属するもので、建前上は私人による土地に対する完全な所有権は否定されているそうです。ただし、実際上は土地所有権は認められているようです。
参考リンク オーストラリアの不動産関連情報
中国では共産主義なので当然かも知れませんが、やはり私人による土地に対する完全な所有権は否定されているそうです。その代わり、払下げ土地使用権と言う権利があり、70年使用できるそうです。
参考リンク 中国の不動産関連情報
香港では全ての土地は香港政府の所有で、やはり私人による土地に対する完全な所有権は否定されているそうです。その代わり、香港政府を賃貸人とする賃貸借と言う権利があるそうです。
参考リンク 香港の不動産関連情報
こうしてみると土地に対する完全な所有権を認めていない国がかなりあるようで興味深いと思います。意外と完全な所有権を認めていない国があるのだから、オーストラリアのように概念上、日本国の全ての領土は原則として「天皇陛下」に属するものとして、私人(生物学的な個人だけでなく、法人も含む)による日本の土地に対する完全な所有権を否定することにすれば、色々な問題が解決できるように思われます。
立派なタワーマンションや、高層オフィスビル等、豪華で立派な各種建造物を建てる場合は、現在と同じような市場原理に任せることにし、日本人が東京で子供を産み育てていけるような家は、無料に近い低価格で国が提供するような制度にする。
放置されている人工林は国に返還して貰(もら)って、国の方で杉や桧(ひのき)の伐採を行い潜在自然植生の回復も行う。
生活困窮者で自宅の無い人には家を無償で提供する。家が欲しい人には家を無償か低価格で提供する。空き家で困っている人からは空き家を返還してもらい、国の方で解体して更地にする。この場合、国が提供する家は標準的な建築物とし、豪邸や、自分好みに設計したい家は注文住宅として、今まで通り建築士が設計し、注文住宅専業メーカーが建築するようにすれば、そうした業界に与えるインパクトは軽減されると思われます。
以上
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